東京高等裁判所 昭和41年(ネ)2082号 判決
三、控訴人らは、公労法一七条・一八条は憲法に違反すると主張するが、右各法条をもつて違憲と解すべきでないことは昭和四一年一〇月二六日最高裁大法廷判決(刑集二〇巻八号九〇一頁)の判示するところである。思うに、公企体の職員の争議権はその職務の公共性に対応する制約を当然の内在的制約として内包するものと解すべきであり、具体的に如何なる制約が許されるかを決定するにつき、争議行為禁止の代償措置の有無が考慮せらるべき一要素となるものと解すべきであるが、前記認定の本件争議行為の規模、国民生活に与えた影響および後記認定の本件争議行為の目的等に照らすと、本件争議行為当時、争議行為禁止の代償措置である公労委によるあつせん・調停・仲裁の機関が具体的に活動を開始していなかつたとしても、これによつて本件免職を違憲ならしむるものと解することはできない。
四、(三)前記のとおり昭和二四年一月の改正規程は、電車乗務員については、待合時間中勤務時間に算入される時間を一時間短縮したから、右規程にもとづく前記交番表においては実際乗務する時間が一日平均九分程増加する形となつているが、右の乗務時間の増加は規程の改正の結果にほかならず、交番表自体は、規程を実施するため、規程の定める勤務時間の範囲内において、鉄道局長によつて作成せられる勤務の割振りであつて、労使関係における勤務場所の指定と同じ性質を有ち、公労法にいわゆる管理運営事項として使用者たる被控訴人の権限によつて行なわれるべきものと解するのが相当であり、交番表の作成、実施についての従来の労使の慣行をみても、昭和二三年政令二〇一号施行前国鉄職員が、国家公務員として団体交渉権を保障されていた当時から本事件にいたるまで、かつてこれが団体交渉の議題として取り扱われた事跡はなく、その実施に当つては、現場長から所属乗務員に説明をするにとどまつていたことが認められ、また昭和二四年六月一日公労法の施行以後も、交番表の改正が、団体交渉の対象となつたことはない。以上の事実を認めることができる。
(四)叙上の経過に徴すると、新交番表の実施そのものは、国鉄職員の雇傭契約上の権利ないし生活権に対する不正な侵害とはいえず、本件争議行為に出ることが組合として緊急やむをえない措置ないし正当行為であつて違法性を欠くとの控訴人らの主張は採用できず、かえつて、以上の経過および本件口頭弁論の全趣旨に徴すると、控訴人らの本件争議の真の目的は行政機関職員定員法による行政整理を阻止せんとする政治目的にあり、その目的達成のため新交番表の実施の機会にこれが阻止を斗争目標として掲げたものと認めるのが相当である。
(仁分 瀬戸 土肥原)